Como Sense

常識(Common Sense)から何かが欠落した、そんなブログ。

僕の名は。

僕の名前は難しい。自覚はある。

名前が難しいと、いろいろと厄介なことが多い。

 

説明がめんどくさい

読みの説明

新しいクラスで先生が名簿を見ながら一人ずつ生徒の名前を呼んでいくイベントがある。名簿に読み仮名がふられていない場合は、先生は必ず僕のところで詰まり、僕が声を張って読みを説明するという一連の流れが約束されている。

自分の場合は苗字も名前も難しいので、特にインポテンツ(※1)だ。苗字が読めないからせめて名前で呼ぶという逃げ道がなくなり、「出席番号何番の人~」と呼ばれ、僕は小さい頃から番号で呼ばれる受刑者の気分を味わう。

ただ、読みを説明する状況にも、読めるけどマイナーな読みの名前の場合と、そもそも読めない名前の場合とで、対応が変わってくると思う。

 

【中島太郎(マイナーな読みの名前)の場合】

冴えない中年男性理科教師「ナカジマタロウくん。」

中島「先生、ナカシマです。」

「あぁ、ごめんね。ナカシマタロウくん。」

「はい(半ギレ)。」

 

【勘解由小路躑躅丸(そもそも読めない名前)の場合】

赤メガネ色気たっぷり巨乳女性保健教師「えーっとぉ…。」

勘解由小路「カデノコウジツツジマルです。」

「あっ、教えてくれてありがとう。カデノコウジツツジマルくん。」

「はいっ!」

 

このあと、真面目だった太郎は理科が嫌いになり、赤点を取った挙句ひきこもってしまう。一方、躑躅丸は名前を教えた代わりに個人的にいろいろと教えてもらうことになったのだった。 

いや、まぁそういうことは置いといて、マイナーな読みの名前だと謝罪の言葉と気まずさがあり、そもそも読めない名前だと感謝の言葉と優しさがある。僕の名前はどちらかというと後者のパターンだが、今のところ例に挙げたような展開には一度もなっていない。残念。

 

さらに僕の場合は、苗字の読みが耳馴染みのない少しヘンテコな響きであり、僕の滑舌の問題もあってなかなか一回では伝わらない。聞き返されることが多い。一発で伝わると妙に嬉しい。それだけで相手を好きになる。なんてチョロい奴だ。

 

 

漢字の説明

自己紹介では、ヘンテコな響きを轟かせたあと、どんな漢字を書くのか説明するという難関が待っている。その漢字は一般的には見慣れないものだが、構造自体は平凡な部品を組み合わせただけなので、部品を一つ一つ説明したらいい話だ。しかし、3つに分解すると部品のレイアウトを説明する必要があるし、2つに分解するとなんか説明が悲しくなってしまう。今のところ最適解は見つかっていない。

僕はこの説明をするのがイヤで、ついこの間ちょっとした集まりのときに「長谷川」という偽名を名乗り、その日一日「長谷川」として生きた。漢字三文字の苗字に憧れる。

齋藤さんとか渡邊さんとかは、読みの説明は簡単だけど漢字の説明が苦労しそう。

 

 

悪いことができない

苗字が珍しいと、自己紹介のときのネタになるし、印象に残って覚えてもらいやすいが、その印象は悪い方向に繋がることもある。

2年くらい前、珍しい苗字の方々が立て続けに事件を起こした。同じ事件を佐藤さんとか鈴木さんとかが起こしたとしても、ここまでインパクトが強い話題にはならなかったに違いない。そして、事件を起こした方々と同じ苗字の方々は、なんらかのイジリを受けたに違いない。何なら僕も被害者のうちの一人だ。イジるなら苗字よりも乳首とかにしといてほしい。

そもそも、僕の苗字はめちゃくちゃ珍しい苗字というワケではない。全国に数世帯しか存在しないということでもなく、それなりにいる。人数から言うと今のAKBメンバーくらいいるらしい。というのも、そのメンバーたちの大半が一部の地域に固まっているもんだから、全国的に見たら馴染みのない苗字って感じ。

実家近くの保育園では、タメで同じ苗字が自分含めて3人いた。その範囲での苗字ランキングでは石川と並んで2位タイ。僕の苗字を持つ者が僕1人になったのは高校からだったので、中学までは名前で呼ばれ、高校からは苗字で呼ばれた(ここで前回の日記の女子中学生がこのブログを書いているということが嘘とバレる)。

そんなワケで、何か悪いことをしでかして苗字が世間にバレたら、地元の方々の大半も悪い人間であると世間から認識されるかもしれないし、こんなブログで実名をポロリと出そうもんなら、僕と同じ苗字の人は乳首がイジられるのが好きというレッテルを貼られ、苗字と乳首を同時にイジられることになる。そして僕は地元に帰れなくなってしまう。帰りたい。そもそも苗字がどうであれ悪いことはするなって話だけど。

めちゃくちゃ美人なのに出川という苗字の女の子とかは苦労が多そう。

 

スムーズに進まない

飲食店の予約や順番待ち

電話で聞き返されるくだりは店側も客側も不幸になる。僕の苗字を使った予約はなるべく避け、他者に任せるか、偽名を使う。なんなら今日も順番待ちでハセガワと記入した。ここで注意しておかなければいけないのは、自分がハセガワであることを頭に入れておくこと。これを覚えておかないと、いくら店員さんがハセガワ様と呼んだところで、自分の順番は回ってこない。さらには、「誰だよハセガワ、早く行けよ」という行き場のない謎の怒りもこみ上げてくる。そのハセガワは自分のことなのに。僕は順番待ちの時間だけは自分がハセガワであることを忘れなかったため、無事にハセガワとして案内された。呼ばれるとき少しドキドキした。ちなみに僕の前に待っていた人は呼び間違えられた。僕の勝ち。

画数が多い

書類とかいろいろと書くのが大変。習字で名前のところがぐちゃぐちゃっとなる。中学の数学のテストは、開始の合図の後に名前を書き、問題を解いていく流れだったので、画数の多い名前を持つ者は小問1つ分くらいのタイムロスが出てしまう。例の勘解由小路躑躅丸くんは大変そうだ。誰だ躑躅丸って。知らねえよそんなやつ。

予測変換で出ない

自分の端末は自分で設定すればいい話だが、他者が僕の名前の漢字を予測変換から探し出す手間を考えると申し訳なく思う。

印鑑がない

気軽に買えない。もしものときに対応ができない。中学で貰った印鑑を使い続けているため、今のところ不便を感じていない。

ロマンチックじゃない

これは「説明がめんどくさい」のところと少し内容がかぶる。

例えば、体が入れ替わっちゃったりなんやかんやあったあの子と奇跡的な再開を果たして「君の名前は?」的な展開になったとき、僕の名前を言ったところで、その珍妙で滑稽な響きに「は?なんて?」と聞き返されるかもしれない。その「は?なんて?」にはロマンチックの欠片もない。それまでの出来事が台無しだ。

例えば、人助けをした際に「今度お礼をしたいんでよろしければお名前を」的な展開になったとき、僕の名前を言ったところで、その耳の中に異物が入っていく感覚に「は?なんて?」と聞き返されるかもしれない。それはおそらく変な響きアレルギーによる拒絶反応の結果だ。その「は?なんて?」を言葉にした時点で既にお礼をする気などさらさらない。ロマンチックのペの字もない。そもそもロマンチックにペの字はない。他の選択肢としては「名乗る程の者ではないので」と残して去るのがカッコイイが、このセリフがやたらと噛みやすく、僕の名前以上の難易度を誇る。そもそも「名乗る程の者ではないので」がカッコイイのは、名乗らなかったという行為自体よりも、そのセリフを噛まずにスラスラと言えたことに対する評価なのではないかと思える。

 

 

 

散々不満をこぼしたけど、自分の苗字も別にめちゃくちゃ変ってわけでもないし、何ならあだ名で呼ばれると響きがなんとなくかわいい。出席番号的にも割と問題ない位置。名前もキラキラネームとかじゃないし。ただちょっと今でも自分がこの名前なのか違和感がある。

そりゃあメジャーな苗字の人にも悩みはあると思う。佐藤さんって呼ばれてどの佐藤だよって思うこともあるだろうし、目立たない方の鈴木って陰で呼ばれるかもしれないし、悪いことをした人と同姓同名になる確率も高くなるだろうし。

 

「名は体を表す」って言葉があるけど、変わった名前の人って多少なりとも上に挙げたような経験をしているはずだから、なんかちょっと変わった人になる傾向ある気がする。自分で言うのもアレだけど。

同じ読みでも漢字が違ってたら、きっとイメージも変わるんでしょう。漢字以外でイメージを表現するっていうのもあるでしょう。「さおりちゃん」とか「かおりちゃん」はかわいらしいイメージで、「サオリさん」とか「カオリさん」はクールっぽくて、「さほりさん」とか「かをりさん」とかは古風で奥ゆかしくて、「沙保里さん」とか「馨さん」とかはメダルいっぱい獲りそう。

 

 

 

ってか長い。何だよ途中の教師と生徒のやりとりとかロマンチックがどうだとか。

前回の日記で勢いに任せていっぱい書けたらいいなとか書いてたけど1ヶ月近く期間を空けてしまった。このまま書くのめんどくせーってなって1日だけのブログになるところだった。危ない。

 

 

難しい漢字でもトリッキーな読み方でもなく、それでいて周りにそれほど同じ苗字の人がいなくて、それなりに特別感があって、五十音でも中間くらいの名前がうらやましいな。

 

っていうおはなしでした。

(何回も「名前」って書いてるけど、姓+名のことなのか、下の名前だけのことなのかは各自の判断で。)

 

 

 

※1

要するに「タチが悪い」ということ。物事の性質が好ましくないってこと。